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あとがき(2023年1月)

●明けましておめでとうございます。昨年は心に刺さった言葉がいくつかあった。その中の一つに「往(い)ってこい」がある。これは母を亡くした20歳の女性の言葉。思いがけぬ母の死。命の事実の厳しさが有縁の者の悲しみを深くする。葬儀が終わり、たくさんの花を添えられて出棺する母に対して、その女性が「往ってこい」と大きな声で言った。その言葉が私に刺さって取れない

●私は枕経の時に、故人の人柄を聞きながら法名を考える。彼女は「恵の字をつけて」と言った。「数え切れないほどの優しさをたくさんたくさん恵んでもらったから」と。母の名を称(よ)ぶ時、恵まれてきた優しさにいつでも出遇い、頑張れる事を願って「称恵」(しょうえ)とした。

●そのような経緯を思い出しながら、「往ってこい」と叫んだ彼女の心の内を勝手に思案してみた●「あなたがいなくなって、あなたの子として出遇えた事の本当の有り難さを知りました。本当に本当に寂しくて辛いけれど、あなたから恵まれてきた優しさを力にして生きて往きます。だから私の事は心配せずに往っておいで。私もいずれ往くから待っててね」という、母に出遇えた事の感動が、「往ってこい」という言葉にまでなったのではないだろうか

●感動を言葉にする事は難しいが本当に感動すれば自然に溢れ出てくるのが言葉なのだろうと改めて思った。

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